当院では、胃がんと診断された患者さんへの治療において、下表のような癌の進行度や、持病・合併症・年齢などを総合的に判断し、患者さんとの対話により治療方法を決定していきます。
進行度とは癌の深達度(深さ)とリンパ節及び他臓器への転移の状況から判断されます。持病や合併症、年齢や体力により行える治療が制限される場合があります。
当院では大きく分けて手術、抗がん剤治療、放射線治療を行っております。
各治療の概要は下記で解説していきます。詳しくは受診時に主治医になんでもご相談ください。
胃癌臨床分類 | 転移 | |||
なし | あり (リンパ節) |
あり (他臓器) |
||
深達度 | T1a/T1b、T2 | Ⅰ | ⅡA | ⅣB |
T3、T4a | ⅡB | Ⅲ | ||
T4b | ⅣA |
手術
手術の目的は、癌細胞を取り切って完治を目指すことにあります。そのほか、癌による症状を改善するために行う場合もあります。
主にステージの低い胃癌に対して行われるもので、手術により癌細胞をすべて取り除き、完治を目指す治療法です。
当院では一般的なお腹を切って開ける開腹手術のほか、低侵襲な(患者さんの体への負担が少ない)通常の腹腔鏡手術に加え、令和元年からは手術支援ロボットを使用したロボット支援下手術を取入れています。
開腹手術
お腹を開き、肉眼で確認しながら切除を行う一般的な手術
メリット
- 臓器を直接触知することができるため、触覚があり、複雑な操作ができる。
- 大きな腫瘍の切除にも対応できる。
デメリット
- お腹を大きく開くため、術後痛みが強い。
- 手術の傷跡が大きく残る。
腹腔鏡下外科手術
腹部に数か所開けた5mm~12mmの穴にポートを挿入し、お腹を二酸化炭素で膨らめ、専用のカメラや手術器具をポート通じてお腹の中に挿入し、モニター画面でお腹のなかを観察しながら、器具を操作して胃の切除を行う手術
メリット
- カメラによる拡大視野での操作ができ、細かい操作が可能である。
- 術中出血量が少ない。
- 傷が小さく手術後の疼痛が少ない。
- 通常、手術後の回復が早く入院期間が短い。
- 手術跡が比較的小さい。
デメリット
- 通常、手術時間が開腹手術より長い。
- 腫瘍が大きい場合は、難しい
- 腹部手術歴などにより腹腔内の癒着が強い場合は、腹腔鏡手術ができないことがある。
ロボット支援下手術(腹腔鏡下外科手術)
腹腔鏡下手術と同様にお腹を二酸化炭素で膨らめ、腹部に数か所開けた約8mmの穴にカメラや手術器具が装着されたロボットアームを挿入します。操作する医師が操縦席から3D映像を見ながら操作して胃の切除を行う手術です。
ロボット支援下手術については下記をご覧ください
メリット
- カメラによる拡大視野での操作ができ、細かい操作が可能である。
- 術中出血量が少ない。
- 傷が小さく手術後の疼痛が少ない。
- 通常、手術後の回復が早く入院期間が短い。
- 手術跡が比較的小さい。
- 3D映像でより肉眼に近い視野で手術を行える。
- ロボットにより手振れが制御され、精細な作業を行える。
デメリット
- 通常、手術時間が開腹手術より長い。
- 腫瘍が大きい場合は、難しい
- 腹部手術歴などにより腹腔内の癒着が強い場合は、腹腔鏡手術ができないことがある。
- 手術器具・器械が高価。
- 触覚がない。
化学療法(抗がん剤治療)
化学療法の目的は抗がん剤を用いてがん細胞を抑えることです。
内服薬や点滴などで行う方法により、薬剤が血液の流れに乗って全身に到達し、がん細胞に影響します。薬剤の種類や組み合わせはがんの病期によって異なります。また、免疫療法とは、免疫機能の活性化を維持してがんを攻撃する薬物療法です。
当院では、2009年より外来での化学療法を開始し、点滴治療の多くを外来で行っています。
ベッドが5台・リクライニングチェアが5台(うち3台がテレビ付き)設置され音楽を流し、ゆったりした雰囲気の中で治療を受けられます。
また、院内には日本看護協会から認定されている「がん化学療法看護認定看護師」が2名おり、医師と連携し、副作用に対するセルフケア援助など、「自分らしく生きることを支える」ことを目指して看護にあたっております。
放射線治療
放射線治療は、主に進行癌、再発した胃がんなどに対する補助的な治療として用いられます。
原発巣であれば通過障害や出血の改善、転移巣からの各種症状の緩和を目指した治療として行われます。
術後単発「~数個」転移「再発」であれば局所制御目的の放射線療法を行うことがあります。部位によっては局所制御率の高い定位放射線療法を行います。
文責:外科