外科では消化器外科・乳腺外科が協力して診療を行っており、乳腺外科のメンバーは専門医1名、認定医1名、乳腺外科専門医プログラム専攻医数名で診療を行っています。
現在、日本人女性の9人に1人が生涯の間に乳がんになると言われています。どの部位のがんでも同じですが早期発見が重要です。とはいえ、乳がん検診を受けられる施設は限られます。
当院健診センターでは乳がん検診を実施しています。公的補助が受けられる場合と人間ドックのように自費健診になる場合がありますので、詳細や予約は健診センターにお問い合わせください。
(健診センター TEL:0547-35-1601、受付時間:月曜日~金曜日 14時~16時)
症状のある方や検診で要精査となられた方は、月曜日から木曜日のご都合がつく日に受診予約をお願いします。まずは早期検査、診断が必要です。診断後は専門医・認定医を交えてカンファレンス等で治療方針を吟味し説明いたします。(病理診断科等とのカンファレンスの様子はこちらから)
乳がん治療において、主に術後に行われる放射線治療に関しては放射線治療専門医が担当します。乳がんに対する標準的な放射線治療は当院で施行可能です。
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)について
アメリカの女優さんが遺伝性乳がん卵巣がん症候群と診断され、予防的に(がんになる前に)乳房や卵巣を切除したことを公表し注目されました。
現在、乳がんと診断された方の中で遺伝性が疑われる一部の方に対して、BRCA1またはBRCA2遺伝子を調べる検査が保険適応となっています。血液検査で行うBRCA analysisを当院でも行うことが可能です。
HBOCに関しての解説は下記のPDFをご参照ください。
HBOC理解していただくために (PDF 2.09MB)(プリントアウトなどしてご利用ください)
乳がん組織の遺伝子検査について(OncotypeDX:オンコタイプDX)
乳がんの治療において、化学療法(抗がん剤治療)を行うかどうか判断に悩むケースがあります。脱毛・倦怠感・吐き気などを伴い、時間とお金もかかる抗がん剤による治療が本当に必要な治療なのか悩む場合に行う遺伝子検査です。
乳がんのタイプや進行度にもよりますので、全員が対象の検査ではありません。対象となる方は保険診療で行うことが可能です。
早期乳がんに対するラジオ波焼灼療法について
2024年8月から、早期乳がんに対するいわゆる「切らない手術」を始めました。正式には乳がんラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation therapy:RFA)といいます。
当院は、日本乳癌学会から乳がんのラジオ波焼灼療法の実施医療機関として認定を受けました。
他院からの紹介も受け付けておりますので、医療連携室までお問い合わせください。
ラジオ波焼灼療法(RFA)とは
ラジオ波焼灼療法は特殊な針をがんに穿刺してラジオ波の熱によって焼灼し、切除と同程度の効果を期待できる方法です(図参照)。乳房には数ミリの針穴の傷だけで、手術のような大きな傷は残りません。また乳房の変形も少なくて済みます。
手術の適応について
手術手順としては、全身麻酔下にまずセンチネルリンパ節生検を行い(腋窩には5cm程度の傷がつきます)、その後専用の針を用いて腫瘍を穿刺して概ね10分前後、70度を超える程度までラジオ波にて腫瘍とその周囲組織を焼灼します。焼灼範囲が規定されていますので、あまり皮膚に近いとやけどします。がんの大きさと位置が一番重要な規定因子となり、合わない方は対象となりません。
対象は大きさが1.5㎝以下、皮膚から離れている、組織型、リンパ節転移がない、など限定されますので、すべての方が受けられる手術ではありませんが、小さく早期発見すれば、乳房に大きな傷のつかない治療も選択できるようになりました。
ラジオ波焼灼療法(RFA)を受けた後の流れ
標準的には乳がん部分を少し大きめに切除する乳房部分切除術(乳房温存手術)を行います。この場合は切除したものを検査し完全切除がされたかどうか確認できますが、ラジオ波焼灼療法は腫瘍が完全に消失したかどうかはその場では確認できません。後日、画像検査や組織検査を受けていただき、改めて確認する必要があります。術後のフォローアップは手術に比べるとやや煩雑です。それぞれの利点欠点をご理解いただいて、治療方針を決めていきます。
化学療法による脱予防のための頭皮冷却療法(Paxman©)の導入について
乳がんの治療において、術前・術後に化学療法(抗がん剤治療)を行うことがあります。選択する薬剤にもよりますが4~6ヶ月程度要することが多く、ほぼ100%に脱毛が発生し、多くの方がウィッグや帽子などを用いることになります。化学療法を終了すると頭髪は徐々に元に戻ってきますが、ウィッグがいらなくなるまでには長期間を要します。(個人差はありますが、1~1.5年程度)
化学療法による脱毛を少しでも抑えるために、化学療法中に頭皮を冷却することで脱毛を抑制する機器を導入しています。この機器を使用すると化学療法による脱毛が抑制され、また頭髪の戻りが早くなる効果が期待されます。適応となる薬剤やタイミングが限られるため、化学療法を行う方の全員が対象ではありません。また保険外診療(自費)となります。薬剤の選択や回数にもよりますが、化学療法期間を通して全体で約20万から45万円程度かかります。
頭皮冷却療法の希望がある方は、化学療法開始前に外来に問い合わせください。対象の薬物療法や、施行方法、費用など説明いたします。
化学療法誘発性末梢神経障害の予防について
化学療法(抗がん剤治療)の副作用の一つに末梢神経障害があります。具体的には「手足のしびれ・痛み」「ものを落としやすくなった」「手足の感覚が鈍い」「足の裏の感覚がおかしく何かが挟まったような、砂利の上を歩いているような不快感」「足先が垂れてつまずきやすい」などの症状が見られることがあります。程度がひどくなると生活の質を著しく下げます。
この化学療法誘発性末梢神経障害に対する予防・治療には、確立した方法は現在の所ありません。しかしながら効果が期待できる方法がいくつか報告されています。当院ではそのうち「手足冷却療法」と「サージカルグローブ(手術用手袋)法」を導入しています。これらは確立した確実な方法ではありませんが、一部の方には効果が期待できる簡便な方法です。適しているかどうかは薬剤の種類にもよりますし、デメリットもありますので、ご希望の方は主治医・外来化学療法室にご相談ください。これらは無料で利用できます。
手足冷却療法
専用の手袋・足袋で手掌と足部を冷やします。抗がん剤投与前から投与後しばらく冷やすことで、手掌と足部への抗がん剤の暴露を低減させる目的です。専用の手袋と足袋の数に限りがあります。利用に当たっては外来化学療法室にご相談ください。
サージカルグローブ(手術用手袋)法
適切なサイズよりワンサイズ小さい手術用手袋を2重に装着します。抗がん剤投与前に到着し、投与終了後おおむね3時間程度装着したままにして、ご自宅で外していただきます。
HBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)と診断された方へのサーベイランスのご案内
BRCA1またはBRCA2の異常(病的バリアント)が見つかった方はHBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)と診断されます。下記の表のように遺伝子に異常(病的バリアント)のない方と比較してがんになるリスクが高いことが知られています。
日本遺伝性腫瘍学会より抜粋
女性は乳がん卵巣がんの発がんリスクが高くなり、男性は前立腺がんの発がん率が高くなります。また、特に血縁に膵がんの方がおられる場合は膵がんのリスクも高いとされます。
当院では対象のHBOCの方に通常の健診とは違う、より積極的なサーベイランスの用意があります。多くは保険適応がありませんので、人間ドック等と同じ様に自費診療になります。
ご希望の方には下記の様なサーベイランスを用意してあります。当院以外で遺伝子検査を受けられている方は、受診に際しては紹介状と遺伝子検査の結果の持参が必要です。
サーベイランスの詳細は下記ファイルをご参照ください。
HBOCフォローHP用 (PDF 386KB)
お知らせ
「ブレスト・アウェアネス」をご存知ですか?
ブレスト・アウェアネスとは、乳房を意識する生活習慣のことで、4つのポイントがあります。
- 自分の乳房の状態を知る
- 乳房の変化に気を付ける
- 変化に気が付いたらすぐに医師に相談する
- 40歳になったら、2年に1回乳がん検診を受ける
チェックする際のポイントや詳細は、こちらのブレスト・アウェアネス パンフレット(PDF 1.14MB)をご覧ください。
乳がんの治療について詳しく知りたい場合は
日本乳癌学会では、医療者からの説明をより深めて理解できるよう動画を作成しています。イラストを用いた説明動画で、下記の添付ファイルやURLからご覧ください。
- センチネルリンパ節生検について(動画が流れます)
- 乳房の手術について(動画が流れます)
- 腋窩リンパ節郭清(動画が流れます)
- 乳がん説明動画紹介チラシ (PDF 201KB)
文責:外科