膀胱癌について
膀胱と膀胱癌
膀胱は下腹部に位置する臓器で骨盤の中におさまっており、恥骨の裏側にあります。腎臓で作った尿が尿管という細い管を通り膀胱に貯められます。膀胱には尿を貯める働きと、尿を出したいときに適切に収縮するという働きがあります。膀胱の内側は移行上皮という粘膜で覆われており、ここから発生した悪性腫瘍を膀胱癌(移行上皮癌)といいます。膀胱の悪性腫瘍の約90%をこの移行上皮癌が占めます。
どのような人がかかりやすいか?
50歳以上の方に好発します。女性よりも男性に多く2~3倍といわれています。喫煙者は非喫煙者に比べ約4倍、膀胱癌になりやすいと言われています。
症状は?
1. 肉眼的血尿
初発症状として一番多くみられる症状です。膀胱炎と異なり痛みを伴わないことが多いです。血尿が1回出た後突然に止まってしまうこともあります。
2. 痛み(排尿痛、下腹部痛)
膀胱炎のときにも同様の症状がありますが、抗生剤を服用してもなかなか治らないことが特徴です。
膀胱癌のタイプは?
大きく分けて3つのタイプがあります。
- 表在性癌
悪性度の低い癌で、膀胱の内腔にカリフラワー状に突出して発育します。膀胱内に多発しても多くの場合、浸潤(癌が深く進行)や転移は起こしませんが、半数以上の患者さんで再発します。 - 浸潤性癌
悪性度の高い癌で、根が広く膀胱の壁の深いところまで浸潤する傾向があり、進行すると転移を起こします。 - 上皮内癌
膀胱の表面に這うように発育するタイプで、悪性度が高い癌です。放置すると浸潤性癌となる危険性があります。
どんな検査が必要か?
1.尿検査(尿細胞診)
尿中に悪性の細胞がないかを調べます。
2.レントゲン検査
造影剤を点滴しながらレントゲンを撮って、尿路に異常がないかを調べます。膀胱に大きな腫瘍があると均一に写らないことがあります。
3.膀胱鏡検査
膀胱の中を内視鏡で観察します。膀胱癌の診断には最も大切な検査です。尿道から内視鏡を挿入するため多少の痛みを伴いますが、柔らかく細い内視鏡を使用しているので1~2日間でおさまることがほとんどです。
これらの検査で膀胱癌が発見された場合、さらにCT, MRI, 骨シンチなどの検査を行うことがあります。これは癌がどの程度進行しているかなど治療方針の決定のために行います。
経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)を受けられる方へ
手術の目的、必要性
- 表在性癌の場合は内視鏡的に腫瘍を切除します。
- 浸潤性癌・上皮内癌の場合には生検をするために行います。
- 治療せずにいると、癌が進行したり出血が止まらなくなる危険性があります。
治療の実際
膀胱内に特殊な鏡を入れて内視鏡で確認しながら電気メスで癌組織を切除します。下半身麻酔で1時間程度の手術です。手術後に尿道に管が入りますが、ほとんどの場合翌日に抜くことができ食事・歩行・身の周りのことができます。2~3日での退院も可能です。しかし、内視鏡的治療を受けたあとに半数以上の患者さんに腫瘍が再発するという問題があります。手術で切除した組織をくわしく顕微鏡で調べますが、その結果によっては再発予防として追加治療を行います。
治療の合併症は?
1.出血
稀に手術で削ったところから再出血する場合があります。血尿が強い場合には再手術で止血が必要になることがあります。
2.穿孔
電気メスが深く入りすぎると膀胱壁に穴が開いてしまうことがあります。この場合尿道の管をやや長めに(1週間強)留置する必要があります。
文責:泌尿器科