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HOME診療科・部門診療技術部栄養室食習慣を見直して健康な身体づくりをしましょう ~「脂質異常症」と診断されたみなさまへ~

食習慣を見直して健康な身体づくりをしましょう ~「脂質異常症」と診断されたみなさまへ~

毎年の健康診断の結果は確認していますか?結果が出たところからが健康管理の始まりです。
ここでは、血液検査の中の脂質の項目(LDL(悪玉)コレステロール、HDL(善玉)コレステロール、中性脂肪)と食事との関係について解説していきます。

  • LDLコレステロール(以下LDL-C)が高い
  • HDLコレステロール(以下HDL-C)が低い
  • 中性脂肪(トリグリセライド、以下TG)が高い   

が気になる方は是非参考になさってください。
 

脂質異常症とは??

脂質異常症の診断基準は以下の通りです。

尚、LDL-Cの管理目標値は、糖尿病、慢性腎不全、非心原性脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞など)、末梢動脈疾患(PAD)の既往がある方は120 mg/dl以下、冠動脈疾患の既往がある方は100 mg/dl以下になります1)。
 

脂質異常症って何が怖いの??

脂質異常症は、動脈硬化性疾患の最も重要な危険因子の1つとされています。つまり、放っておくと

  • 心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患
  • アテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞などの脳血管障害
  • 末梢動脈疾患

の発症リスクが上昇します。ちなみに、動脈硬化性疾患の予防には、高血圧、糖尿病、喫煙などに対する適切な管理も重要です1)。
 

脂質異常症発症の食事以外の原因は??

実は、脂質異常症の原因は食事だけではありません。

  1. 原発性脂質異常症
    1. 家族性高コレステロール血症、家族性複合型高脂血症、家族性Ⅲ型高脂血症などの遺伝性によるもの。
  2. 続発性(二次性)脂質異常症
    1. 甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、腎不全・尿毒症、閉塞性黄疸、糖尿病、クッシング症候群、自己免疫疾患、薬剤性、妊娠 などによって二次的に生じるもの。


脂質異常症を改善するための食事のポイント

1.適正なエネルギーとバランスの食事

LDL-C、TGが高い方、HDL-Cが低い方はもちろん、肥満、糖尿病、高血圧症の方、健康な方にもおすすめの食事です。
適正なエネルギー量は以下の式で算出できます。3で割ると一食分のエネルギーが出るので、外食時などの参考にしてみて下さい。

適正エネルギー.png
実は、エネルギーだけ気にしていても脂質異常症や肥満などは改善されません。例えば、1日のエネルギー摂取量は制限内でもカップラーメンだけや菓子パンだけの食事を摂っていたらどうなると思いますか? 私たちの身体は、毎日筋肉や骨などたくさんの細胞を作りかえています。その材料や、必要な道具を揃えてあげなければならないのですが、残念ながらカップラーメンだけでは必要な材料や道具となる栄養素は全てまかないきれません。肥満気味の方が減らしたい脂肪も、栄養が足りなければ燃えにくくなってしまいます。
バランスよく食べるコツは、

  • 主食、主菜、副菜を毎食揃える
  • 様々な食材を選ぶ(特に、主菜・副菜は色々な食品から)
  • 主食の重ね食いを避ける(ラーメン+チャーハンなど)

以上のことが大事です。野菜類に多く含まれる食物繊維は、血糖値の上昇やコレステロール吸収を抑制してくれる作用がありますので、一番始めに箸を付けるといいでしょう。

バランスの良い食事.png

2.脂肪の多い肉類を控え、魚や大豆製品の摂取頻度を増やす(特にLDL-Cの高い方)

焼肉のカルビや、豚バラ肉(三枚肉)、鶏皮などの脂質に比較的多く含まれる飽和脂肪酸はLDL-Cの合成を促進します。主菜で肉類が多い方は、脂身の少ないモモ肉やヒレ肉などにし、魚を食卓に取り入れてみましょう。

肉より魚.png

3.マーガリンやクッキーなどの洋菓子を控える(特にHDL-Cの低い方、LDL-Cの高い方)

マーガリンやクッキーをサクサクにするために広く用いられるショートニングに多く含まれるトランス脂肪酸は、酸化LDL-Cを増加、HDL-Cを低下させ、冠動脈疾患のリスクを上昇させるという報告があります。洋菓子などの間食を、ヨーグルトや片手に乗るくらいの果物にしてみてはいかがですか?

乳製品と果物.png

4.主食や芋類、果物の食べ過ぎに注意する・甘い菓子や飲料を控える(特にTGの高い方、HDL-Cの低い方)

上記の食品に多く含まれる糖質は、沢山摂りすぎると血糖値をより上昇させます。血糖の上昇と肥満、高TG血症、低HDL-C血症と相関があるという報告があります。特に、砂糖を多く含む微糖の缶コーヒーやジュース、スポーツドリンクなどは控えめにしていきましょう。

飲み物.png

5.アルコールを控える(特にTGの高い方)

アルコール摂取は肝臓でのTG合成を促進させるという報告があります。適量飲酒(下記参照)を心がけ、週に2日程度休肝日を設けましょう。

アルコール.png

6.青魚の摂取量を増やす(特にTGの高い方)

サバやイワシ、サンマなどの青魚の脂に多く含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸(EPAやDHA)は、TG低下作用、血圧低下作用、血小板凝集抑制作用、内皮機能の改善などが期待されています。魚類やn-3系不飽和脂肪酸の摂取量が増えると、冠動脈疾患が減るという報告があります。エゴマ油やアマニ油もn-3系不飽和脂肪酸の多い油脂として有名です。

青魚.png

7.コレステロールを多く含む食品を摂り過ぎない(コレステロールが高い方)

特に、LDL-Cが高い方は、以下の表を参考にコレステロールの多い食品を食べ過ぎないようにしましょう(1日200 mg以下程度)。健康な方のコレステロールの制限量は現在撤廃されています。これは、人によって食事由来のコレステロールの吸収率が異なる、食事からコレステロールを多く摂取すると肝臓での合成が減少しその値が一定に保たれており、コレステロール摂取が直接血中コレステロールに反映されないという報告があるためです。

コレステロールを多く含む食品
食品名 1食あたりの量 ⇒コレステロールの量
1個 (50 g) 210
鶏レバー 串2本分 (100 g) 370
豚・牛レバー 串2本分 (100 g) 240-250
あん肝 50 g 280
さきいか 50 g 185
うなぎの蒲焼 1尾 (120 g) 276
車海老 大2尾 (70 g) 168
ししゃも 5尾 (75 g)300 225
辛子明太子 1腹 (60 g) 168
田作り 15 g 83
シュークリーム 1個 (100 g) 250
カスタードプリン 1個 (125 g) 189
クリームパン 1個 (105 g) 137


食事以外に気をつけるところはある??

食事以外で気をつけて頂きたいことは、喫煙と運動不足です。
喫煙は、脂質異常症と同様に動脈硬化性疾患の主要な危険因子です。出来ればやめていきましょう。
また、脂質異常症改善には運動の中でも特に速歩やスロージョギング、サイクリングなどの有酸素運動が有効で、HDL-Cを上昇させる効果が認められています。目標は毎日30分以上ですが、普段の生活で取り組めそうなことから無理のない範囲で行って頂くことをおすすめします。筋肉量が低下している高齢者の方は、筋肉トレーニングを併用することが有用です。
例:

  1. 1日30分以上、週1回以上のウォーキングから始める
  2. 毎日歩く習慣を身につける(万歩計を付け、目標の歩数を決める)
  3. 生活の中で身体をまめに動かす(エレベーターではなく階段にする等)
  4. サイクリング、水泳等のスポーツを始める
  5. 一緒に運動する仲間を作る

脂質異常症だけでなく生活習慣病の予防には日頃の食習慣の見直しや改善が大切です。栄養指導室から生活習慣病予防に役立つ情報を掲載しましたので、ご興味のある方は是非ご覧下さい。みなさまやご家族のご健康を心からお祈りします。
 

参考文献

1) 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版(一般社団法人 日本動脈硬化学会)
2) 日本人の食事摂取基準2015年版(菱田明・佐々木敏)

下記も参考にご覧ください。

  1. アルコール飲料カロリー表(PDF 318KB)
  2. バランスの良い食事(PDF 750KB)
  3. 狭心症・心筋梗塞 再発予防のための食事療法(PDF 928KB)
  4. 脂質異常症(PDF 545KB)
  5. 調味料に含まれる塩分量(PDF 304KB)
  6. 糖尿病と間食について(PDF 87.3KB)
  7. 尿酸値が高いと言われたら(PDF 839KB)

 


文責:栄養指導室

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