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2024年10月川根地区医療学習会

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 2024年10月19日(土)に川根文化センター「チャリム21」で医療学習会が開催されました。当医療センターの呼吸器内科 金田医師が「肺がんと結核」、島田消防署川根南出張所救急救命士 長谷川氏が「救急車利用の実態」について講演を行いました。

 はじめに、金田医師が肺がんから説明しました。肺がんは大きく2つに分けられ、非小細胞がんと小細胞がんに分けられ、非小細胞がんはさらに腺がん、大細胞がん、扁平上皮がんに分けられます。この中で最も多いのは、線がんだそうです。
 肺がんの治療には、手術、放射線治療、薬物治療があります。手術が代表的な治療方法であり、基本的には手術が根治、治しきることにあたりますが、初期の肺がんであれば、放射線だけで治癒が望めることもあるそうです。手術あるいは放射線治療が可能であるのは、肺がんのステージ(Ⅰ期~Ⅳ期)で言うと、Ⅰ期とⅡ期の非小細胞肺がんと、Ⅲ期の非小細胞肺がんの一部だそうです。金田医師は早期発見が大事になると伝えました。がんが進行し、リンパ節やその他の内臓に転移がある状態を進行肺がんと呼びます。このようにリンパ節や肺の中の別の部位、あるいは肝臓などに転移があると、残念ながら手術や放射線治療はできないので、抗がん剤の治療、薬物治療になるとのことでした。
 次に薬物治療について説明しました。薬物治療は、内服薬や点滴によって全身に散らばっているがん細胞をやっつける治療です。いわゆる抗がん剤と言われるもので、大きく分けて3つ、1つめが細胞障害性の抗がん剤、2つめが免疫チェックポイント阻害薬、3つめは分子標的薬、この3つに分けて治療方針を立てていきます。
 1つめの細胞障害性の抗がん剤は、主に点滴注射で行うことが圧倒的に多く、一部の抗がん剤は内服の薬もありますが、ほとんどが点滴になるそうです。外来で行う場合と入院で行う場合に分かれていて、初期の抗がん剤の導入は、例外が無ければ入院で点滴を行うことが多いとのこと。2回目からの抗がん剤は可能であれば外来で行うことが多いですが、点滴の時間が1日かかる場合の抗がん剤もあるので、送迎の負担や患者さんの体力に合わせて、入院という手段を取ることもあるそうです。患者さんに合った治療方針を協議し、患者さんに一番適切な治療を提供していきたいという気持ちで選んでいると伝えました。
 2つめの免疫チェックポイント阻害薬は、直接がん細胞をやっつけるのではなく、免疫細胞(身体に備わっている免疫力)が、がん細胞をやっつける手助けをする薬になります。外部からの異物を排除しようとする機能が人間の身体には備わっていて、本来であればがん細胞も免疫力によって倒してほしいところですが、がん細胞は特殊なタンパク質を体の表面に出しているため、自分の免疫細胞ががん細胞を異物と認識できず、結果として自分の免疫力ががん細胞に働かないという現象が人間の身体の中では起きます。そのため、がんが大きくなっていってしまいます。免疫チェックポイント阻害薬とは、がん細胞の表面に出ているタンパク質が、身体の免疫細胞とくっついてしまうと免疫細胞はがん細胞を攻撃できませんが、免疫チェックポイント阻害薬で剥がしてあげることによって、結果、身体の免疫細胞ががん細胞を異物と認識することができ、がん細胞を攻撃することができるという仕組みの薬になります。
 3つめの分子標的薬も非常に大事な薬で、呼吸器科では、レントゲンやCTでがんが疑わしい患者さんには組織を採取して、その組織を分析しています。がん細胞の遺伝子変異というのが陽性になった場合は、それぞれの遺伝子変異に対しての分子標的薬が使えます。遺伝子変異が見つからなければ、細胞障害性の抗がん剤や免疫チェックポイント阻害薬を使用するという流れになりますが、まずは検索するそうです。例えば、EGFR遺伝子変異というものが、だいたい30~40%が腺がんで陽性になるそうですが、それが見つかるとこれらの薬が使えるとのことでした。
 主治医の先生と患者さんとで一緒に確認していただきたいことは、組織を取って肺がんの病理結果がどうであったかを確認すること、腺がんなのか扁平上皮がんなのか、あるいは小細胞肺がんなのかをきちんと確認することです。それによって治療方針、この後は全身検査でCTや頭のMRIを撮影して、身体のどこかに転移していないかというのを正しく判断した上で、手術ができるのか、放射線治療ができるのか、あるいはステージが進んで抗がん剤の適用になるのか、呼吸器科ではそれらの組み合わせた治療も行っており、どのような治療方針になるかをきちんと担当の先生と確認する必要性を伝えました。

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 結核は、昔は「不治の病」として認識されており、若くして結核で亡くなった著名人も多い病気です。世界の総人口の約4分の1が結核に感染している最大級の感染症です。日本であまり実感することはないですが、世界では毎年1千万人が新たに発症し、160万人の方が亡くなっているとのことでした。日本に目を向けると、結核の患者は少なくなってきていて、2021年に初めて罹患率10.0を切り、中蔓延国から低蔓延国となりました。患者さんの年齢別でみると、圧倒的に高齢者の感染が多く、日本全国では、大都市に集中する傾向があり、地方はあまり目立たないという特徴があります。ただ、外国生まれの患者さんも注意が必要で、徐々に増えてきているそうです。
 感染経路は、結核の患者が咳をした時、結核菌は水蒸気の飛沫にコーティングされていますが、結核菌の特徴はそのコーティングが外れても空気を浮遊できることです。だいたいの他の菌は地面に落ちますが、結核は空気感染といって結核菌だけで空気中を漂い、第三者の肺に定着してしまいます。狭い空間で8時間以上、結核患者と一緒にいると感染のリスクが高まると言われています。肺以外にも、血液に乗れば腎臓の結核、リンパ節に乗れば首のリンパ節結核になるなど、いろいろなタイプの結核があります。
 感染者が多いのは比較的人口密度の大きいところで目立ち、静岡県は平均値だそうです。静岡県の推移は、日本の動向がわかると言われていて、慎重に注視されるそうです。結核と診断されたら、他者に感染すると医師が判断したら入院で治療を行います。静岡県では入院を受け入れている病院は4つしかありません。聖隷三方原病院が20床、天竜病院が8床、当院が4床、静岡県立総合病院が50床です。当院は4床ですが、責任を持って結核をまん延させないように、入院した患者さんが治るように治療を行っています。最後に金田医師が、結核についてポイントをまとめて講演は終了しました。

 

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