2023年10月28日(土)に川根文化センター「チャリム21」を会場に医療学習会が開催され、当医療センター消化器内科部長の石橋医師と島田市健康づくり課の大嶽保健師が講演を行いました。
第1部では、消化器疾患をテーマに、消化器領域におけるがんと当院のESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)治療について講演を行いました。
生涯でがんになる確率は、男性では65%、女性では51%と、日本人の2人に1人は何らかのがんになると言われているそうです。疾患別で見ると、男性では前立腺がん、女性では乳がんが多いですが、男女ともに消化器がんも多いとのことです。そこで、消化器がんの例として、食道がん、胃がん、大腸がんにおける症状や治療法を紹介しました。
食道がんの初期症状では、食べ物を食べた時に胸の奥がチクチクするなど、胸がしみることがあるそうです。がんが大きくなると食道の中が狭くなるため、何かを飲み込むときに胸のつかえを感じるようになったり、さらに進行して大動脈や神経にがんが浸潤すると、胸や背中にも痛みを感じるようになるとのことです。食道がんは喫煙と飲酒が最も重要な危険因子であり、世界保健機構(WHO)がアルコールが体内で分解されてできる物質(アセトアルデヒド)を「最も関連の強い発がん物質」として認定しています。飲酒するとすぐに顔が真っ赤になる体質の人が、大量のアルコールやアルコール濃度の高い酒を飲むと発がんの危険性が高まるとのことでした。
胃がんの症状としては、胃の痛み、不快感、胸やけ、吐き気などが挙げられますが、これらの症状は胃炎や胃潰瘍の可能性もあるそうです。胃がんの危険因子として塩分過多、喫煙、飲酒、その他ピロリ菌感染が挙げられます。飲酒量が多いほど胃がんになりやすく、エタノール摂取量が23g以上で胃がんのリスクが高まるそうです。エタノール摂取量23gというのは、日本酒1合分やビール500ml缶1本分にあたります。
大腸がんは初期段階では自覚症状がなく、がんが進行してくると血便や下血などといった症状が現れるそうです。さらに進行すると慢性的な出血が起き、それによってめまいや貧血を起こします。大腸がんの危険因子としては、運動不足や肥満、飲酒などが挙げられ、食生活の欧米化による影響も挙げられました。
これらのがんに対し、内視鏡治療、外科的治療、放射線治療、化学療法など、がんのステージに合わせた治療法があります。ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)は、早期がんを電気メスを使って粘膜下層レベルで一括切除する治療法で、実際のESD治療の様子を動画で紹介しました。ESDのメリットは、高齢患者には外科的手術に比べてESDの治療が低侵襲性であることや浸潤がんでも切れること、デメリットは合併症が起こりうることや出血により輸血が必要になることがあるそうです。当院でのESD治療件数は、他院からの紹介などにより増加傾向にあり、今は若手医師を指導しながら様々な部位における治療を行い、内視鏡治療の体制を強化していることを紹介して第1部は終了しました。
第2部は「健康づくり事業」と題して、健康づくり課の大嶽保健師が島田市のデータや取り組みを踏まえて講演を行いました。
最近は人生100年時代とも言われ、健康寿命を延ばして人生を全うしたいと思われる方も多いですが、まずは病気を発症させないこと、病気になっても重症化させないことが大切です。市の総合計画の大きな柱でもある「健康で自分らしく暮らす」に向かって、できることから始めてほしいと伝え、島田市の健康状態を説明し、これを踏まえてどう過ごしたら良いか紹介しました。
いつまでも楽しく自分らしく暮らすために、適度な塩分摂取や運動を心がけること、また市で取り組んでいる「しまだ健幸マイレージ」への参加を呼びかけました。健康を害してから健康の良さに気づくものであり、健康のための環境整備や特定健診の受診などの予防から始めることを伝えて講演は終了しました。
文責:経営企画課