2023年8月26日(土)に大津農村改善センター「山王」を会場に医療学習会が開催され、当医療センター呼吸器内科 一條医師、島田市健康づくり課の渡邉裕美主任保健師と畑澤亜耶保健師が講演を行いました。はじめに主催者の「地域医療を支援する会」の矢澤代表から開会の挨拶がありました。
第1部では、一條医師が「呼吸器疾患について」と題して結核に関する講演を行いました。結核はマイコバクテリウムという結核菌によって引き起こされる感染症です。結核は治療薬がない時代は不治の病として考えられていました。日本では江戸時代から明治時代にかけて流行し、高杉晋作や石川啄木は結核で亡くなったと言われています。結核は昭和20年代までは「国民病」と言われ、50年前までは死亡原因の第1位でした。
日本における結核の問題点として、「高齢化」「地域格差」「外国生まれ結核患者の増加」が挙げられます。2017年時点のデータで、新たに結核と診断された患者さんの60%近くが70歳以上のため、糖尿病などの併存症や基礎疾患を持った患者が多くなっています。人口密度の高い大都市に集中する傾向があり、ホームレス等の社会的弱者も集まりやすく、結核高蔓延国の外国人の流入も多いことから、国内の地域格差が大きくなるそうです。また、高蔓延国出身の外国人労働者や学生の流入が増え、外国生まれ結核患者の割合は若年層(20~29歳)が高くなっています。
結核の主な感染経路は空気感染で、発症者の咳(飛沫)で結核菌が排出され、この排出された結核菌(飛沫核)によって人から人へと感染するそうです。結核菌は数分から1時間ほど空中を浮遊し、狭い空間に8時間以上同室すると感染リスクが高まります。しかし、結核に感染した人がすべて発病するとは限らないそうです。感染してから2年ほどで発病する人が5人程度(一次結核)、感染してから数年から数十年後に免疫力が低下した時に発病する人が5人程度(二次結核)と、感染をしても発病する人は生涯を通じて5~10%程度だそうです。
感染すると肺に定着した結核は3つの進展経路で全身に広がり、肺だけでなく肺外にも病変を作って肺外結核が引き起こします。肺外結核は頸部リンパ節結核や結核性髄膜炎、皮膚結核など全身に進展してしまいます。発病すると、長引く咳、痰、微熱、体重減少、血痰などの自覚症状が出ます。
結核の治療について、抗結核薬が開発されるまでは死の病として考えられていました。結核菌には大気安静療法といって日光浴や澄んだ空気が有効であると信じられていたり、肺に出来た空洞をつぶすために肋骨を切除し、胸郭を変形させる虚脱療法がおこなわれていたそうです。現在は4種類の薬を併用して治療する標準治療が行われています。
結核の予防は、乳幼児期にBCGワクチンを接種することで、結核の発症は70%程度予防できます。成人は適度な運動やバランスの良い食事、十分な睡眠、定期的な健診の受診が予防につながると呼びかけ、第1部は終了しました。
第2部では、渡邊主任保健師と畑澤保健師が「受動喫煙について」と題して講演を行いました。令和元年度の調査では習慣的に喫煙している割合が全体で16.7%、男性では27.1%、女性では7.6%とのことです。平成21年度の調査と比較すると全体では6.7%、男性では11.1%、女性では3.3%それぞれ減少していますが、最近はなだらかな傾向にあるそうです。
島田市の喫煙状況について調査を行った結果、「吸っていない」、「吸っていたがやめた」と回答した方が82.4%、習慣的に吸っている(「吸っている」・「時々吸う」)と回答した方は16.5%でした。平成30年度の調査と比較するとあまり変化が見られず、横ばいだそうです。
喫煙という行為は、顔のしわや肌の色などの見た目にも影響し、喫煙によって一度黒くなってしまった肺はきれいになることはなく、寿命が短くなることもわかっています。30歳までに禁煙すると元々喫煙しなかった人と同様の寿命が期待でき、50歳で禁煙しても6年余命が長くなると言われているそうです。
また、受動喫煙が引き起こすリスクとしては、子どもには赤ちゃんの突然死、喘息、虫歯の増加など、大人には脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが上がると言われています。最近の煙の出ない加熱式タバコでも、紙タバコと同様にニコチンをはじめとした健康に影響を与える物質が含まれています。
島田市内の開業医や当医療センターでも禁煙外来をやっていますが、禁煙に遅いということはありません。禁煙に失敗しても、その失敗が次の禁煙に成功に導いてくれると、禁煙を呼びかけて講演は終了しました。
文責:経営企画課