2022年8月27日(土)に大津農村環境改善センターを会場に医療学習会が開催され、当医療センター糖尿病・内分泌内科の坪井医師と、静岡市島田消防署の有賀氏が講演を行いました。
はじめに主催者の地域医療を支援する会の神代代表から挨拶がありました。島田市内でも新型コロナウイルス感染者が日々増加していることを強く感じていると話され、当会もアルコール手指消毒、マスク着用、適度な距離を取りながら感染対策をして実施されました。
第1部では、坪井医師が「糖尿病について」と題して講演を行いました。
糖尿病とは、血糖値が高い状態が続くことで様々な臓器に合併症を引き起こす病気です。
血糖値は血液中のブドウ糖の濃度を示し、ブドウ糖は私たちのエネルギー源になります。健常な人であれば、食事からブドウ糖を吸収すると血糖値が上昇しますが、インスリンというホルモンが血糖値を下げる働きをすることで一定に保たれます。しかし、糖尿病になってしまうと血糖値が高くなるだけでなく、変動も大きくなり、自分でうまく血糖値を調節できなくなってしまうそうです。
膵臓から出るインスリンというホルモンには、血液中のブドウ糖を細胞に渡す役割があり、細胞はそこからエネルギーを作り出しています。健常な人であればインスリンが出るのでエネルギーを得ることができますが、膵臓が壊れていてインスリンが出ていない、もしくは出ていてもインスリンが働いてくれないと細胞にブドウ糖が渡らないので、ブドウ糖は食事をするたびにどんどん増えていき、血糖値も上昇していきます。エネルギーが作れない状態が続くとエネルギー不足に陥り、お腹が空いている状態になってしまいます。たくさん食べて太って糖尿病になるイメージがあるかもしれませんが、実はそうではなく、糖尿病が本当に悪くなるとエネルギーがどんどん減っていき、末期になると痩せていってしまう怖い病気だそうです。
糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病があります。2型は遺伝などが関係し、元々糖尿病になりやすい体質に、生活習慣の乱れが加わることで糖尿病の状態になってしまうそうです。1型はインスリンが出ない病気であり、糖尿病の10%くらいの人が1型だそうです。
糖尿病の症状として、一番よく知られているのは「喉が渇いてたくさん飲んで、尿をたくさん出す(口渇多飲多尿)」という症状です。血糖値が高くなると、血液中のブドウ糖が多くなるので、砂糖水の砂糖が多い状態と同じになります。ドロドロとした血が体中をまわると、体は「もっと水分を摂って濃度を薄めて!」という指令を出すので、喉が渇き、たくさん水分を摂取します。たくさん飲むと尿も出るので体が脱水状態だと思い込んでしまい、水分を摂ろうとしてこういった症状が出るそうです。
糖尿病の診断方法は、空腹時の血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の検査値を見て、糖尿病か判断しています。血糖値が高く典型的な症状があれば、糖尿病と診断してすぐに治療に取り掛かります。症状が出ているということは、気づかないうちにある程度病気が進行していたということでもあるそうです。
糖尿病の合併症には、慢性合併症の「しめじ」と急性合併症の「えのき」があります。
「し」・・・神経障害、「め」・・・目の網膜障害、「じ」・・・腎症
「え」・・・壊疽(脚が腐る)、「の」・・・脳梗塞、「き」・・・虚血性心疾患
例えば、「め(目の網膜障害)」には糖尿病網膜症が挙げられます。目が霞んでいたので眼科に受診をしたら網膜症だと診断され、その時はもう確実に糖尿病になっているということもあるそうです。できれば1年に1回は健康診断を受けて、自分の身体の状態を知ることが大切であると呼びかけました。
最後に、糖尿病治療の目的について、血糖値が少し高いくらいであれば問題はありませんが、血糖値が高いままで続くとじわじわと体の中が蝕まれていきます。最終的にいろんな合併症につながってしまうため、合併症を予防するために糖尿病の血糖値を下げて治療をしていくことが大事だそうです。糖尿病は他の病気と大きく異なるのは、食事や運動が治療の根本であり、自分が主治医になったつもりでコントロールしていかなければなりません。特に運動は糖尿病があるなしに関わらず、筋肉をつけるといった観点からも大事になります。
おすすめは食後の1時間後くらいに朝夕20~30分歩くと良いそうです。食後の1時間後というのは、体の中に食事が吸収されてくるのが1時間後くらいであり、そこで運動すれば血糖値の上昇を抑えることができます。大事なのは運動を続けることでインスリンが体の中でよく効くようになり、能率よく糖分を使ってエネルギーを生み出せるようになるそうです。
もし自分が糖尿病と診断されたら自分の生活を見直し、自分が主治医になったつもりで食事や運動などを心がけることで、健康な人と変わらない生活を送れるようになるとのことでした。
第2部では静岡市島田消防署 救急係の有賀氏が「救急車の利用について」と題して講演を行いました。
救急件数について、令和3年は静岡市消防局全体で3万8,000件あり、そのうち島田地区は3,752件だったそうです。傷病の程度は軽症、中等症(入院が必要な程度)、重症(入院を2~3週間要する)に分けられ、5年ほど前は軽症が60%くらい占めていたのが、令和3年は軽症が44.9%と下がり、当会のような活動やポスターによる啓発活動の影響から、救急車の適正利用が広がっているのではないかとのことでした。
また、救急搬送についても新型コロナウイルスの影響を受けており、発熱の人が非常に多いそうです。令和2年11月から令和4年7月の21か月間で新型コロナウイルス陽性者の搬送が77件、そのうち、令和4年4月から7月までに搬送した陽性者の数が32件でした。このことから、今年度に入り、今までコロナの陽性者を搬送した数の半分をすでに搬送していることがわかり、それだけ第7波の影響は大きく、まだまだ油断できない状況が続くと思われるので、引続き感染対策の協力をお願いしました。
次に救急車を呼んだ時に用意しておいてほしいものなど、ポイントを解説しました。119番に電話をかけると「火事ですか?救急ですか?場所はどこですか?」と聞かれます。自宅の固定電話であれば、電話をかけた場所がピンポイントでわかり、携帯電話でも新しい機種であれば半径6メートルまではわかるそうです。
救急車が来るまでに用意しておくものとして、お薬手帳、保険証、子どもの場合は母子手帳、外国人の方は在留カード、ペースメーカー手帳を挙げました。中でもお薬手帳が一番大事で、旅行へ行くときにも持っていくことが望ましいとのことです。他にもコロナワクチンの接種状況や既往歴・手術歴、家族の連絡先などを確認するので、1枚の紙にまとめて整理しておくと良いそうです。
また、呼吸をしていないと思われる場合は胸骨圧迫を行っていただきたいとのことでした。119番に電話をすると、消防隊員から口頭指導で心肺蘇生法の指示がありますが、なかなかこれが難しいということもあり、有賀氏が人形を使って心肺蘇生法を実演しました。
①「大丈夫ですか」と両手で肩を強く叩き、意識がない場合は呼吸を確認します。
②胸を触って、頬で息を確かめて、息をしていないようなら胸骨圧迫を行います。
③腕を組んで胸の真ん中あたりを圧迫します。
④大変な場合は近所の人にも手伝ってもらいながら、救急隊が来るまで休まないで圧迫し続けます。
心肺蘇生法は消防署でも講習会を行っているので、いざという時のために受講を呼びかけて講演は終了しました。
文責:経営企画課