2022年5月28日(土)に金谷公民館「みんくる」を会場に医療学習会が開催され、当医療センター脳神経外科の浦野医師と、島田市健康づくり課 大嶽保健師、株式会社はいやくの村松管理薬剤師が講演を行いました。はじめに主催者の「地域医療を支援する会」の神代代表から挨拶があり、静岡県内における年々増加する高齢者の割合の影響や、フレイル(高齢化に伴い身体機能などが低下した状態)・ロコモ(運動器の障害により移動機能の低下した状態)への対策として六合地区や金谷地区で行っている取組について紹介しました。当会はアルコール手指消毒、マスクの着用などの感染対策をして実施されました。
第1部では、浦野医師が「脳卒中について」と題して講演を行いました。
脳卒中は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血を合わせて脳卒中と呼び、卒中という言葉は「突然起こる」という意味があり、無症候性の隠れ脳梗塞などを含めると脳血管障害という、脳卒中よりも少し広い範囲を示す意味になるそうです。
脳卒中は具体的にどんな症状が出るか、アメリカ脳卒中協会が簡単にまとめた「FAST」という合言葉を用いて説明しました。FはFace(顔のまひ)、AはArm(腕のまひ)、SはSpeech(言葉が出ない)、TはTime(発症時刻)を示しています。(「脳卒中から大切な人を守る合言葉『FAST』」のページへ移動します)
症状が出て少し様子を見る方もいますが、上記の症状が出たら脳梗塞や脳出血が疑われるため、すぐ病院へ来て欲しいとのことです。まひが出て1~2日経ってから病院に来ても、起きてしまった脳梗塞に対してあまり出来ることがないため良くならず、リハビリや再発予防をすることしかできないそうです。しかし、治療効果のある時間内であれば、詰まった血管を再開通させることができれば症状は良くなることがあるそうです。脳梗塞が完成していないこと、本人の症状や経過時間などの条件が揃えば治療することができますが、実際に治療できるのは発症して1~2時間以内が多いとのことでした。脳梗塞は患者さんが出来るだけ早く病院に来ること、治療には時間制限があることを知っていただきたいということを話されました。
脳出血は、出血したところは脳の損傷が起きているため、できることはこれ以上出血が増えないようにすること、安静にすること、血圧の管理を行います。症状によっては手術をしたり、内科的治療を行ったりしますが、予防をすることが何よりも大事になるそうです。くも膜下出血は動脈瘤が破裂したものですが、脳出血と違うのは、脳の表面に沿って出血するため、頭蓋内圧が一時的に高くなり、突然の激しい頭痛や吐き気、意識がなくなるなどの症状が出るそうです。
脳卒中は突然起こるものですが、事前に起こるリスクを確認できるのが脳ドックです。脳ドックは、40歳以上、生活習慣病がある、喫煙している、身内に脳梗塞や脳出血を起こしたことがある方などが対象です。脳ドックのMRIでは、症状がない脳梗塞、脳出血が見つけられることがあります。症状がなくても起こりやすいということであり、見つかった場合は今後の予防が重要になってきます。脳ドックでは頸動脈エコーをすることもあり、頸動脈は全身の血管の代表であり、頸動脈で動脈硬化の様子が見られれば、心臓の血管なども動脈硬化が進んでいる可能性もあるのでチェックすることができます。結果が悪ければ、生活習慣の見直しやかかりつけ医で内科的治療を行ったり、予防的な治療などを考え、自分でも健診や脳ドックを受けてコントロールをしていただきたいとのことです。最後に脳卒中協会が紹介する脈の測り方を全員で確認し、浦野医師が聴講者からの質問に答え、脳卒中について理解を深めることができました。
第2部では、大嶽保健師から「しまだ健幸マイレージ」の紹介、村松管理薬剤師が「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」について講演を行いました。COPDは、原因の90%がタバコによる呼吸器疾患であり、肺の慢性炎症により空気や酸素を取り込めなくなる疾患を指します。軽症では主に痰や咳、重症化すると呼吸困難を起こすそうです。症状の目安として、朝に痰が出る、風邪を引いていないのに痰が出る症状はCOPD中等症の可能性があり、喫煙している方は禁煙開始の目安にもなるとのことです。また、歩行距離が短くなったり、以前よりも階段の上り下りが難しくなったという方は、治療が必要な目安だそうです。
COPDを治療するにあたり、タバコを止めたり薬を飲んだりして症状が改善しても、肺の状態が改善したと勘違いする方も中にはいますが、喫煙を継続することで重症化は進み、最終的に薬剤だけでは症状が改善しなくなると、在宅酸素療法を行う生活になってしまうそうです。COPDは喘息や他の呼吸器疾患と合併することもあり、喘息の治療歴やアレルギー性鼻炎がある、発作的に呼吸状態が悪化する方などは重症化しやすいとのことでした。
また、タバコの影響は大きく、親の喫煙によって子供の成長や心臓、脳など複数に悪影響を及ぼします。また、親が喫煙していることによって子供の喫煙率も高くなり、早くからの喫煙であるほど、依存性や身体への影響も大きくなります。まとめとしてCOPDが重症化してしまうとかなり苦しく、身体活動制限が強く出るものであり、治療においても少しずつ進化はしているそうですが、肺の状態を戻す治療法はないそうです。そのため、喫煙していて痰が頻繁に出るなどの症状が見られる方には、禁煙の検討を推奨し、禁煙する意思があれば一緒に治療をしましょうと呼びかけて講演は終了しました。
第3部として地域医療を支援する会が、安心して暮らせる医療環境を守るために、会から6つの提案を行い、学習会は閉会しました。
文責:経営企画課